キー配列のお話と、ホームポジション

キーボードには、押すと文字が入力されるキーと、何かの機能のキーと、ひとつだけで押しても何も起こらない(=他のキーと組み合わせて初めて作動する)キーがあります。その中ではウィンドウズキーだけはちょっとめずらしく、ひとつだけで押すとスタートメニューが開き、組み合わせて押しても何かの作動をします。ウィンドウズキーについては「絵のキー」を参照してください。

ここではまず、文字を入力するキーについてみていきます。

キー配列はクワーティ

キーボードを見てみると、一番上の列が「ESC、F1、F2……」となっていて、次の列が数字キー、それから「Q、W、E、R、T、Y……」と続いています。このキーボードの並びは、三段目のqwertyをとってクワーティ(あるいはクウォーティ)配列と呼ばれています。

たとえば名探偵シャーロックホームズなどを読んでいると、「英語でもっともよく使われる文字はe、続いてtやa」などいう知識を活用して暗号を解くシーンが出てきます。それから考えると、eやtは左手だし、aにいたっては左手のしかも小指ですから、キーボードの配列は英語を効率的に入力するのに適しているとはおよそ言えません。便利なはずのパソコンの、キー配列が入力に不便かもなんて不思議ですね。

今のパソコンのキーボードの配列は、入力のしやすさや効率を考えて作られたのではなく、タイプライターで最も一般的に使われていたキー配列をもとにしています。ではタイプライターは入力しやすかったのかというと、「機械式のタイプライターでは、あまり素早く打たれると壊れてしまうので、あえて打ちにくい配列を採用していた」なんていう説があるくらいです。やっぱり、入力しにくいのでしょう。
クワーティ配列は別に効率よくはなかったので、いろいろと効率よく入力されるキー配列が考案されました。ですが、もともとタイプライターに慣れた人たちはそれに乗り換えるのをいやがり、結局旧来のタイプライターの配列がパソコンでも一般的になったのだそうです。

デファクトスタンダード

クワーティ配列のように、国際的に基準として定めたなどでなく、いつのまにか一般的になってしまったものを「デファクトスタンダード」と言います。
「デファクト」の意味は「事実上の」で、語源はラテン語、「デジュリ=法令上の」の対義語です。他にも、ビデオデッキが出始めの頃はVHSとベータマックスがあったのに、いつのまにかベータマックスは見かけなくなりました。VHSがデファクトスタンダードになったということです。一度デファクトスタンダードになったものは、法令や規格などで後から変えることが非常に困難です。

ちなみにクワーティ配列は、英数モードのアルファベットの刻印に対する呼び名で、ひらがなの「たていすかんな……」のほうは、JIS配列と言います。

キーに刻印されている文字と入力される文字との関係

実は、キーに刻印されている文字と入力される文字には規則性があります。とはいえ日本語入力は「かな入力」と「ローマ字入力」があり、はっきりとしたきれいな規則性があるのは「かな入力」のほうです。なのでここでは、かな入力で説明していきます。

キーの刻印 キーの刻印

キーの左側が英数モードの時に入力される文字で、右側がかな入力の時に入力される文字です。そしてキーをそのまま押すと下段の文字が入力され、Shiftキーと一緒に押すと上の段の文字が入力されます。

つまり、上の写真のキーは英数モードでそのまま押すと「3」、英数モードでShiftキーを押しながら押すと「#」が入力され、日本語入力モードのかな入力ではそのまま押すと「あ」、Shiftキーと一緒に押すと「ぁ」が入力されます。
このように、かな入力では、キー配列を見ると入力できる文字がわかるようになっています。たとえば句読点の「。」は、Shiftを押しながら「る」と書いてあるキーを押すと出てきます(お手元のキーボードで確認してみてください)。「が」や「ぱ」と入力したいときには、「か」と入力してから「゛」を、「は」と入力してから「゜(エンターキーの左隣です)」を押すといったように、手書きの書き順のように入力できます。小さい「っ」や「ぃ」はShiftキーを押しながら「つ」や「い」です。ローマ字入力にはこのような規則性はありません。たとえばローマ字を知らない高齢者の方には、かな入力の方がわかりやすく、早く習得できると思うのですがいかがでしょう。確かにローマ字入力より使うキーは一段多くなりますが、キーボードを見ながら打つのなら手を動かす労力はそんなに変わりませんし、何よりキーを見ればわかるのでとても簡単です。

キーの刻印

ちなみに英数モードの場合、ただ押すだけで入力できるのは左下の文字ですが、アルファベットのキーには左下には何も書かれていません。これは上の段の大文字と同じなので、わざわざ「A」の下は「a」と毎回刻印するのを省いているだけです。

この規則性に一見反しているようなのが、右のShiftキーの隣にある、かな入力だと「ろ」が刻印されている、「\(バックスラッシュ)」です。英数モードで入力しても、これだけは文字コードの関係で、「¥(いわゆる円マーク)」で表示されてしまいます。そもそもめったに使わない文字ですし、表示はともかく実質バックスラッシュとして扱われるので気にしなくてもよいようですが、ちょっとスッキリしませんね。

ホームポジション

キーボードを目で見ないで、視線は画面にやったままで入力することを、「ブラインドタッチ」や「タッチタイピング」と言います。「ブラインドタッチ」は和製英語なので、最近では英語の「タッチタイピング」で呼ぶ人が多くなっています。野球で夜やる試合を「ナイター」と言うのも和製英語なので、最近では英語で「ナイトゲーム」と呼んだりするのと同じような感じでしょうか。

ともかく手元を見ないで打つとなると、手の位置が重要になります。そこでキーボードには、「F」と「J」に、ごくごく小さなしるしがついています。

キーの刻印

指先でそのしるしを確かめることで、わざわざ手元に視線をやらなくても、いつも同じ位置に手を置けるからです。その手の位置をホームポジションといいます。そこを基準として、人差し指が縦二列ずつ受け持ち、中指と薬指と小指がその外側の一列ずつをそれぞれ受け持ちます。もちろんホームポジションを無視して独自の入力法をしても、それで慣れてしまって速いのなら問題ありません。手元を見ながら入力しているというひとは、「F」と「J」を指で意識してみてはと思います。